「庭で、いいよね」
俺の動揺を余所に、は庭に入って、バケツやらライターやらの準備を進めてく。
バケツに張られた水に、外灯の明かりが映る。
「ちょっとー!言い出しっぺが、何、突っ立ってんの」
「あ、悪ぃ。」
「……ほら。最初は、コレしよ。」
よくある本数稼ぎの手持ち花火を握らされた。
は、片手に四本の花火を持って、火を点けた。
「……、相変わらずだな。情緒もへったくれもねえよ」
一気に吹き出す、色とりどりの光。火薬臭。
の笑顔。
「いーの!こういう無茶が面白いんだから。それに、私が情緒がどうこう言っても気持ち悪いでしょ」
「だな。調子狂う」
「ちょっ!あっさり認めないの!」
終始こんな調子で、時にはに花火を向ける振りをして、時には花火を本当に向けられて…。
がものすごい早さで花火を消費していくから、あっという間に袋の中は線香花火だけになった。
「あーあ……最後になっちゃったね」
「が四本持ちとかばっかやってたからだろ」
「はいはいはいはい。最後なんだから、そんな可愛くない事言わないの」
が線香花火に、火を点けた。
ジジジ……と燻るような音が聞こえる。
くすぶって、落ちるか落ちないかのところで、落ち切れない。
なんか、俺みてえ。
を好きで……諦められなかった。
に彼氏が出来た時も、が短大に合格した時も、が二十歳になった時も。年齢差をまざまざと見せつけられてるのに、諦めたつもりでも次の日には“好きだ”って自覚してる。
中学からだから…四年近くか。
俺も、大概ねちっこいな。
「……孝介」
「んぁ?何だ?」
考えてるとき、が急に話し掛けて来たから、間抜けな声をあげちまった。
の手に握られた線香花火は、とっくに落ちて地面に消えてた。
「孝介は、若いから……その内離れてっちゃうけど、たまには今日みたいな事、思い出してくれる?」
「は?」
びっくりした。
俺がに対して考えてる事が伝わってんのか?
むしろ、逆だ。
が、大人になってって、今まで取り残されて来たんだ。
「……俺は、離れねえよ」
「ううん。……離れるよ。だって、私がそうだったもん。」
たしかに。は、ずっとここには居たけど、着実に大人になってった。
なんだ。分かってんだ。
「。今から言う頼み、聞いてくれるか?」
「どんな?お金とかは無理だからね」
「違えよ!」
は、いつもみたいに、へらず口を叩く。
だから、俺も遠慮なく言うんだ。
「今まで散々俺を置いてってよく言うぜ。俺はから離れねえからな。こそ、今度は……今度は……」
急に、恥ずかしさが戻って来て、この先を言うのに躊躇いが出てきた。
「今度は?」
とぼけた顔しやがって。
憎たらしいけど、やっぱ好きだ。
これって…重症なのか?
の首に腕をかけて、引き寄せてみる。
昔は、俺より体格が良かったのに、今はあっさりバランスを崩す。
「……こそ、俺から離れるんじゃねえぞ」
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素直じゃない泉君をコンセプトに、菊清らいかへのある「お祝い」で執筆。
泉君の夢って、案外少ないですよね。泉君の夢、あったらもっと読みたいなぁ…。
おめでとう、菊清らいか!
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【08/03/11完成】
【08/04/22UP】