今日も銀髪はお店にやってきます。
『ねぇ、いい加減来るたび私に纏わり付くのやめてくれない?』
返却に出る時もずっとついてくるなんて、営業妨害もいいとこよ。
しかもレジをしていてお客がいなくなったのを見計らって話し掛けられるのもいい迷惑。
「いや〜だって俺ちゃんの事好きだし」
『しつこい男は嫌われるのって知ってる?
それに2、3週間前に知り合った女の子(しかも客と店員なの)に告白って有り得ないんじゃない?』
そうだ。私は正論を言っているはず。ナンパなんでどっかのマダオがすることだ。
「俺、結構前にちゃんに話し掛けた事あるけど、覚えてない?」
いきなり真剣な顔付きになられてもそれもまた困る。
『いつの話よ?』
「返却に出てる時にカードの期限切れとDVDの料金を聞いた客」
『……。あ、あれアンタだったんだ』
「え!?なに、覚えててくれたの!」
覚えてるも何も有り得ないこと続きで印象が強かっただけだ。何を勘違いしてんだこのおっさん。
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この日私が返却に出ていると「このDVDはどこにあるか」とか「新作の隣のペドロは返ってきてるか」などお客さんに聞かれる事が多かった。
返却されたDVDも多く、2人だけでお店を回すのは大変な位だ。
やっと落ち着いてきた時、彼は来た。
少し離れた所からちらちらこちらの様子を伺っている。……はっきりいって変質者並に怪しい。
そんな彼が私に「すみません」と声をかけてきた。
「あのー、最近ここ利用してないからカードが切れてると思うんだけどいくら位かかるの?」
以外と普通なことを聞かれた。
『210円でまた1年更新させて頂けますが』
「じゃあさ、これはいくら?」
そう言って差し出されたのはアダルトのパッケージ。しかも女の人のヤらしい姿がバン!っとパッケージにされている。
私は一瞬引いたが、(むしろ一瞬ではなくずっと引いている。)お客さんだしちゃんと接客をしなくてはならない。
私のお店にはアダルトと成人向けのアダルトがある。アダルトは409円だが、成人向けのアダルトは208円と値段が異なる。
そのため、パッケージからDVDを出して確認しなくてはならない。
『ちょっとすみません。』
彼からDVDを借り、中身を確認した。これは成人向けのものなので210円。その料金を彼に伝えた。
「へー。じゃあ更新とそのやつ合わせていくらになる?」
『418円ですね』
私は営業用のスマイルで答えた。内心もういい加減にしろよと思っていたが顔には出さない。
はっきり言って210円と208円を足すくらい自分で計算しろよ、と心の中で毒づいた。
「じゃぁコレ借りるわ」
もうこの人の接客はイヤだと思い、『あちらにレジがございますので、お会計はそちらでお願いします。では失礼します。』と伝えて途中だった返却にもどった。
これが覚えている限りのことだ。
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「ホントに覚えててくれてるなんて嬉しいんだけど!」
『そうですか。』
覚えていても印象が悪いことには代わりない。
「これって銀さんの気持ちが伝わったからだろ?」
『…。はいはい。そうだと思いますから早く帰って下さい。営業妨害で訴えますよ』
「なんだよーやっと気持ちが通じたと思ったのにそうやってすぐに追い返そうとする!
分かった。ちゃんって実は照れ屋さんなんだろ?恥ずかしいからそうやって俺を帰そうとするんだろ?かわいいなー!」
そういって頭をぐりぐり撫でられる。
『そーゆうことで良いですから』
とりあえず帰れよ、天パ。
「しゃーねえから帰るわ。」
またな。と言葉を残して行ったが、彼が私に話を振る際、事あるごとにアダルトを持ち出している。
女の子にその辺のことを聞いてくる辺り、デリカシーが無いことを早く気付いてもらいたい。
そしたら少しは見方が変わるのになぁ…。と思いながら私はまた返却へと旅立って行った。
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お客さんにこんなデリカシーが無い人がいたので…。てか主人公冷たいなぁ。
菊清らいか。
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……私、大抵の銀ちゃんは好きだ……! 確かに、この主人公は冷たくいらっしゃる・汗。本当、ありがとうございます!!