念願叶って、今日は記憶が戻ってからの初デート。
嬉し過ぎて、15分前に待ち合わせ場所に着いてしまった。気持ちがはやりすぎたろうか。…しかし…既に着いてから30分は過ぎようとしてる。
…これって遅刻…?記念すべき第一日なのに。
いやいや、記念すべき日だからこそ、私の方こそ仏の様な心でいよう。

「お、待ったか?」

坂田さんは、特に悪びれた様子も無く、急ぎもせず歩いて来た。

「待ったどころじゃ無い!何、その余裕は?」

私の仏心は呆気なく消えたらしい。

「まあまあ。人間せかせかしてると大事な物を見失っちゃうよ」

「遅刻してふてぶてしいから、私の信用を失ったよ。坂田さん」

「そんな悲しい事言うなって。今日はの行きたいトコ、どこでも行くから」

「やった!じゃあ」

「その前に、腹減らねえ?ファミレス行こうぜ」

手首をワシっと掴まれて、半ば引きずられるように歩く。

「ちょっと!行きたい場所言ってないでしょ!」

「ファミレスで話そうぜ」



ファミレスに入って、坂田さんはデザートから先に注文したと思ってたけど…。

「あの…それがお昼?」

「おう」

私の前には五目焼きそば。坂田さんの目の前にはチョコレートパフェと苺パフェ。甘い物好きと聞いてたけど、一気に2つのパフェを食べて気持ち悪くならないのだろうか。

ちゅるちゅると、五目焼そばをすすりつつ坂田さんを見る。

「坂田さん」

「ん?」

「お金、渡しておくね。」

「へ?」

「五目焼きそば。別会計すると、レジが混むから、坂田さんが一緒に払って。」

財布から丁度のお金を出して、坂田さんの前に置いた。
だけど、坂田さんはお金を私に突き返した。

「おいおい、男に恥かかすなって。」

「大丈夫なの?」

「馬鹿、お前、それ位…」

坂田さんが財布を出して、無言になった。

「…どうしたの?」

「…割勘でお願いします。」

「うん、分かった。一緒に払ってね」

私は五目焼きそば代を坂田さんの前に置いた。

「出来れば半半で…」

「何で?」

「持ち合わせが、パフェ代にギリギリで足りねーんだ」

…そういえば、事業が上手く行かなくて、給料をろくに払えてないって言ってたっけ…。
遅刻して来たのだって、仕事が立て込んでたからかもしれない。
坂田さんの財布に手を添えて、押し戻す。

「今日は、私が出すよ」

「いや、それは…ありがたいんだけど、俺としては…」

「うん、次に奢ってよ」

不思議だ…。憧れてたのと、全く違う事態なのに。怒りが沸かないし、悪くないかなって思える。

爆発が起きて、坂田さんが死んでしまったら…って思って走った時、とっても恐くて苦しかった。
また会った時は、性格も目付きも違ったけど、私の事を覚えてて前と変わらない力で抱きしめてくれた。

好きな気持ちを、生かしつづけてくれてるのは、目の前の子どもみたいな大人であり、好きなひと。

坂田さんが生きてて、それだけで、私の健やかな気持ちに貢献してるんだ。
坂田さんに、会計を済ませて貰い、私は一足先に外に出る。



外は、いつもと変わりなく、街を行く人はみんな早足だけど、輝く風景。これって恋のレンズを通して見てるからだ。

?」

店から坂田さんが出て来た。私は振り向く。

「どーしたんだ?」

「え」

「すっげえ、笑ってっけど」

知らないうちに、笑顔になってた…。
“それは、きっと、恋してるからだね”ってハイになって言いそうだけど…もっと相応しい言葉が見つかってから言っても遅くないよね?

「美味しかったからだよ」

「そーか」

坂田さんの手が私の頭に乗って、心臓が飛び跳ねる。

「ね、坂田さんトコ行きたいな。」

「え、何?いきなり大胆になっちゃって。」

「いや、そういう意味じゃなくて。お金無いって言うから…坂田さんトコで白玉アンコ作って、従業員さんに差し入れるの」

「いや、そんなのあったら、俺が全部食っちゃうから。、菓子作れんだな」

「常連さんによくオマケで作るからね。銀…時さん」

下の名前で呼ぶのに、照れてしまった。

「顔赤いぞ?」

もう!恥ずかしいから指摘しないで欲しかったのに。

「ありがとな」

坂田さんは、余裕綽々で、私の髪をいじって女の子な気持ちにしてくれる。早く“銀時さん”って言うのに慣れなきゃ。

大事にしよう。この気持ち。



銀 魂 一覧

宜しければ感想を下さいませ♪メール画面(*別窓)

2006/11/01