**************************マヨの騎士3
「ごめんなさい。お力になれなくて」
雑居ビルから出て、一人溜め息を吐く。ネオン街は、夜の闇と反比例して、私の気持ちと溝がある。やっぱり、あの時住所くらいは聞いておくべきだった。
「悩みか?」
声を掛けられ、振り返ったら白髪の、独特の着流しを着た人が居た。
「…悩みはありますけど、大丈夫ですから」
私が行こうとすると、その人もついてきた。
「まぁ待てって。こんな時間に子供が出歩いたらいけないよ」
「…一応、社会人ですから」
白髪頭の人は笑って懐をガサガサと掻き回し、紙を差し出してきた。
「仕事、頼んでみない?」
紙は名刺で“よろず屋”と書いてあった。
そのよろず屋に場所を移し、事情を掻い摘まんで説明した。
「ふーん…男を追って京都からねぇ…」
「はい。名前位しか分からないんですけど…」
「で、興信所から、門前払い食らったって訳か」
白髪の人が、まじまじと私を見る。
「…なんか、見覚えがあるんだよなぁ…どっかで会った?」
「いいえ」
背後から、戸が開く音がした。
「お、チョコ買って来たか?」
「はぁ!?そんな無駄金ある訳ないでしょ!稼いで来いや!」
眼鏡を掛けた男の子が、怒鳴りながら入ってきた。
「新八君、お客さんの前ではしたないよ」
「あ、ごめんなさい!すぐに茶菓子買ってきます」
「あ、おかまいなく…」
私の顔を見た男の子が、目を見開いたまま固まってしまった。
「なっ、あぁっ!」
「女に免疫ないからって、うるせぇぞ」
「さらっとヒドい事言うなあぁぁ!この人、有名人ですよ!」
「へ?」
「プレ●●ーイとか、出てますよね?」
こんな純粋そうな顔して、プレ●●ーイ読んでるのかな?
いや、純粋だからこそ、リビドーというものの処理を弁えているのかもしれない。
「はい。」
「新八、チョコ買う金は無いくせに、エロ本買う金はあんのか」
「違う!広告を見たんですよ。えっと…さんですよね?」
「はい」
*-*-*
「んで、京都で仲良くしてた警察官に会いたいと…」
「はい。警察にも何回か問い合わせてみたけど、教えてくれなくて…」
「そりゃ、そうだろ」
白髪頭の人は間髪入れずに言い放った。
「多分、興信所の人も警察っていうので、いい顔しなかったんだと思います。」
「ま。うちは、やるだけやってみるよ。」
「ありがとうございます!」
「で、警察官の彼の名前は?」
「土方十四郎って言います」
土方さんの名前を出した途端に、二人の顔が強張った。
「…なんか聞いた事ある名前だな」
「真選組の副長ですよ、銀さん」
「知ってるんですか?」
私は身を乗り出していた。
やっと、会える!
「…まあ…本当にそいつかどうか確かめようぜ」
「すごい…お屋敷ですね…」
真選組のお屋敷まで連れて来られて、大きさにびっくりした。私の住んでる長屋がいくつ入るんだろう。
「都合よく居るかなあ?」
新八君が不安そうに、中を見ながら呟いた。
「でも、確かめないとスッキリしませんから。」
門番の人に近寄ってみた。やっぱり警察だから、強そうな人が並んでいる。
「すみません、土方十四郎さんにお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?」
「え、副長に?アポとってある?」
「アポが、必要なんですか?」
「仕事してるからね…」
やっと手にした手掛かりらしきものが、すぐそこにあるのに…それを目の前にして確かめられないなんて、歯痒過ぎる。地団駄を踏みたいと思ったら、後ろから銀時さんがしゃしゃり出て来た。
「会わせてやれよ。困った時の警察だろ?」
「警察って言っても、主にテロリスト対策だから」
「コイツだってエロリストと同じ土俵で張ってんだぜ。同志のよしみでなんとかならねえの?」
「同志じゃないから。ってか大して巧くないよ、それ」
門番の人が冷たく突っ込んだ。うん、私も、たしかに巧くはないと思ってた。
銀魂一覧
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2006/12/11