**************************マヨの騎士7



撮影もバイトも休みの日。
銀時さんから、副長有効説を聞いたので、朝六時に起きて真選組の前に居た。

昨日の脅迫で、心中は穏やかじゃないけれど、土方さんに会いたくてじっとして居られなかった。

自分では大人になったつもりだけど、土方さんは成長したと認めてくれるだろうか…。

長期戦の準備はバッチリ。ご飯も飲み物も用意して来てるし、近くの公衆トイレもリサーチ済だ。

朝ご飯代わりのおむすびを頬張って、お茶を流し込む。昔よく見た刑事ドラマの張り込みみたいで、後ろめたくて興奮する。張り込んでるのは、警察の真ん前だけど。

「…いい匂い…」

まだ、七時になっていない。邸内から、油の匂いがした。フライパンで、ものを焼く匂い。朝ご飯の支度かな?
もうどの位、朝起きて、夜帰って来て、自分でご飯を作ってるだろうか。実家は年に一回位しか帰らないから、一年のほとんどは自分で作る生活だ。

…出来れば今日、土方さんと会えたらいいな…。
昔みたいに、おやつを一緒に食べたい。

おやつ、おやつ、おやつ、おやつ、おやつ、おやつ、おやつ、おやつ…。

手を顔の前で組み合わせて、一心不乱にマヨネーズとアラレを思い浮かべた。

「お気を付けて!!」

いきなりの大きな声に、我に返る。

門を見たら…黒い着物を着た男性が居た。背格好だけなら…土方さんぽいな。
こっち向いて!

…と思ったら、こっちに体を向けたので、ビクっとしてしまった。

だけど、あの仏頂面は…。

「土方さん!!」

土方さんは叫び声に反応して、こっちを見た。相変わらず瞳孔が開いてる…絶対、この人は土方さんだ。

「…あのっ、あのっ…私、誰だか分かりますかっ…!?」

頬がじんわりとして、体温の上昇を告げる。

「…勿論!!さんですよね!?」

門番の人が、即座に答えてくれた。

「え…あ…、ありがとうございます…」

「朝からさんを見られるなんて、死んでもいい位幸せです」

「…ありがとうございます」

気が付くと土方さんは歩き出していて、私に背を向けていた。
なんで、話の途中で行ってしまうのだろう。門番の人に捕まってたから?

ものすごく緊張したのに…。

「失礼します!」

出来る限りの力で土方さんを追って、走る。

「土方さん!」

追いついて、着物の袖を掴んだ。

「京都に居たです!。覚えてますか!?」

ゆっくりとこっちを向いてくれた。やっぱり、土方さんだ。

「……お前は、それでいいのか?」

「えっ!?」

「あの時のまま…そのまま江戸まで来ちまって…」

あの日の土方さんが頭の中で鮮明に再生される。
“その時、まだ俺の事を好きだったらな”
本当に、好きなままで居たらまずかったのか。

「…だって…大人になったら…」

ダメだ。言葉が出ない。

「すまなかった」

土方さんした謝罪が、スイッチになって私は走り出した。

「あ!おい、!!」



大人になったら、堂々と土方さんに恋して…また、一緒にマヨネーズでアラレを食べて…全てが上手く廻り出すと思ってた。

……だけど……。


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2006/12/11