「変?いきなり失礼じゃないですか」
「あぁ、失礼に聞こえちゃった?ゴメンね」
いつものヘラヘラスマイル。どんな時でも余裕綽綽。羨ましい事だ。
「あまり“女”を感じさせないんだろうな。俺、今までちゃんみたいな子に会った事無いからさぁ」
「それは、ロッドさんが私と反対の女ばっかり見てたからです」
人間、興味のある事には目が向きやすい。
私が興味を持つのは、お酒、『かぼす』、面白い事…。そんな感じだから、恋なんて悲しいほど少ない数しかこなしてない。
だから、恋愛経験豊富なロッドさんは私と正反対の女が好きと見た。いや…女の子全般好きそうだけど…好きなタイプがあるとしたら、私と反対だろう。
アレ?切ない。なんで?
私の理想は岩河さん(お会いした事ないけど)で、ロッドさんとは正反対のタイプの筈なのに…。
首筋に冷たい感触が走り“うきゃっ”と声を上げてしまった。
「スキあり〜」
イタズラが成功した子供みたいな眼をして、笑っている。氷を持って赤くなった指で、私の首から頬を触りたくる。
ダメダメ!岩河さんが結婚するまでは、私の青春は『かぼす』なんだ…!こんなイタズラしたりする尻軽男じゃなくって、童顔で純情で誠実な岩河さん(会った事無いけど)が理想なんだから!岩河さん岩河さん岩河さん岩河さん岩河さん……!
「ま、今までは気付かなかったけど、これからはちゃんもきっちり見つめててあげるからね〜」
ぎゃふん!
そんな、人が必死に否定してる所に、そんなタイミングでそんな笑顔、そんなそんなそんな…。グワングワンと頭に振動が走る。
えぇいっ、静まれ脳みそ!!
まだ殆ど手をつけていないグラスを一気に煽った。
「っきゃー!やっぱ最高っ『かぼす』に黒霧○ぁあ!」
「そんな一気に呑まないで!ちゃんっ」
*-*-*-*-*-*-*
帰り道、まっすぐ歩けなくなった私は、ロッドさんにまたおぶわれていた。
ロッドさんの肩ごしに、前方を見た。大きな、ゆるいけど立派な勾配の坂が広がっている。
「あ!ロッドさん、坂!坂!」
「坂?そんな珍しいかぁ?」
坂道をみると、無性に『かぼす』好きの血が騒ぐ。しかも、今、一緒にいるのは…。
「ここ、走って!」
「はぁ!?」
「サマーカラー!甘酸っぱい恋の歌なんです!」
「よく分からないけど…落ちんなよ!」
ロッドさんが走り出した。
振動が案外あるけど…憧れた歌の景色…私、幸せだぁ!
「下ってるうぅーーー!」
これで夕焼けがあったら、最高なんだけど…お月様が居るからいいや。
*-*-*-*-*-*-*-*
「おはよー!ちゃーん」
アレ?私、焼酎を一気に呑んでから記憶無いんだけど…。
「…なんか記憶無い時って、ロッドさんが絡んでる気がする…」
ジトりと、ロッドさんを見つめてみる。そんなに穏やかでは無い視線に動じる事も無く、ロッドさんは、笑顔を崩さない。
「安心してんじゃない?俺って頼れるから」
「はいはい。言っててください。」
ベッドから降りて、胸が振動する。すごく気持ち悪い違和感が胸の先に…ある。背中に手をやると、ホックが外れていて、思わず声に出してしまった。
「……ホック……!!」
「あ、苦しそうだったから外しといた。」
得意げで少しニヤつきの増したロッドさんの笑顔が、余計に恥ずかしくさせた。絶対、何かしらの悪気はあった顔だ、これは。
しかも、服脱いで無いから外しづらいはずなのに…どんだけ外し慣れてんだ!ブラ外し職人か!!
「ロッドさんだけ、朝ご飯減らしてやる!!」
PA PU WA一覧へ
宜しければ感想を下さいませ♪メール画面(*別窓)
2007年2月20日