所定の時間。私は出入り口の前に貼りついて、ガンマ団からの使者を待っていた。給料日、隊長が強奪をしない様にいつもこうしている。
ビーっというチャイムが鳴ってインターホンを見た。
ガンマ団の制服を来た、美青年が立っている。
給料を渡しに来るのは近くに駐在している団員さん。合言葉は、毎回変えている。特戦部隊は恨まれているから、注意しなきゃ。

「メシくったか」

私は合言葉を投げかける。

「エビフリャー」

青年は予想していた単語を返してきた。私は施錠を外すと、扉を開いた。

「お疲れ様です。」

給料を受け取り、すぐにスポーツ飲料を渡した。

「ありがとうございます。サインをお願いします」

青年がボールペンを取り出した時、急に私の視界から青年が消え、代わりに体格のいい人相の怖い男が立っていた。

…怖い…!!

給料袋が床に散らばっていく。

「きゃ」

悲鳴を上げようとしたら口を塞がれた。

必死に手を退けようとするけど、どうしてもビクともしない。

助けて…!!


*-*-*-*-*-*


「何だ?」

床に給料袋が散らばっている。そして、ドアも開けっ放し。
ドアの外を見ると、ガンマ団員が倒れていた。
給料袋に、この状況…。そういえば、が見当たらない。

ドアの外のガンマ団員のツボを突いて起こす。

「あ…」

「何があった」

「後ろから…殴られて…。女の子は、無事ですか…!?」

「…とりあえず中に入れ」

がもしも外に出て行くとしたら給料袋をバラ撒いたまま出かける筈は無い。
…最悪の方向だ…。


*-*-*-*-*-*


「やめて!!」

「黙れ!」

男の平手が飛んできた。
何人もの男に押さえつけられ、服を脱がされている。脱がされているというよりも、ナイフで服を切って裸にされている。

「離して!」

下着も全て切り取られて…次にされる事は…?考えたくもない…!!

「…いい格好だなぁ、お嬢ちゃん」

「何する気!?飛行船に帰」

ナイフを首筋に当てられ、喉はおろか体中を動かせなくなった。

「何もしねえよ。イイ子にしてりゃなぁ…。逃げらんねえように脱がしただけよ」

ナイフを当てていた人が退き、抑えていた人が私を立たせて後ろ手に手首をきつく縛った。足も同時に縛られて私は抱え上げられて、ダンボールの中に投げられる。

封をされて、私は頑張って体をばたつかせたけど、ダンボールの外から蹴られた。お尻がものすごく痛い…。

やっと涙が出て来た。
これが、どうしようもなくて絶望するって事だろうか…。

なんとかしたいのに、手段が無い。
私の代わりなんて、いくらでも居る…助けに来たら、次の戦場の到着時間に間に合わないかも知れない。

棄てられる…かも…。

声が出ない代わりに、涙だけがただただ溢れて来る。


*-*-*-*-*-*


「後ろから近づかれて、何で気付かないんだよ!!」

ロッドの蹴りが、ガンマ団の青年のわき腹にキレイに入る。

「それでも士官学校出てんのか?!」

「す…すみま…せ」

青年はしゃべろうとする度に苦しそうにしている。

「ロッド、落ち着け。お前らしくないぞ」

「何でマーカーは落ち着いてられんだよ…ちゃんは戦闘なんて出来ねえんだぞ!?」

「それは分かりきっているが、そんなことを議論しても意味が無い」

ロッドは、を可愛がっている。余計に落ちつかないのだろう。こんなロッドは初めてだ。

「……隊長」

操縦室に居たGが入って来た。

「何だ?」

隊長は、ゆっくり椅子を回転させた。

「通信です……」

隊長は卓上電話をとり、操縦室のダイヤルをセットした。
隊長はどんどん険しい顔になっていく。

紙に何かを書くと、電話をまた置いた。

「おい。この近くまで案内しろ」

ガンマ団の青年に隊長は紙を見せる。隊長は不自然なほど片方の口角を上げて、瞳は険しく眼光を放っているままだ。

「救出役を誰かやってくれ。今日は力の加減出来る気がしねぇからな」

「俺、やりますよ」

ロッドが進み出た。今のロッドには冷静さが無い…あまり賛同出来ん。

「ロッド、お前は隊長と一緒に行け。私がやる」


*-*-*-*-*-*


もう、どのくらいだろう…喉が渇いた。
涙ももう出ない。諦めてるのか…涙が枯れたのか…。
隙間以外からの光も無く、周りの男達の談笑以外に、長い事何も聞こえない。

「ハーレムか!?」

ダミ声が聞こえてきた。隊長が来たの!?

怒声と悲鳴が聞こえてきた。
……耳を澄ますけど、よく聞き取れない。

少しして、辺りが鎮まり返った。

はどこだ」

……私の事呼んでる……?
体が動かない…声も出ない…。
悔しい。

何かを叩きつける音がした。

急に光が一面に溢れて…光に慣れない目は、人影位しか判別出来ない。…私の頬に触れるものが……指だろうか。

、私が分かるか?」

その言葉遣い…。

「マーカーさん…?」

…見捨てるかと思ったのに…来てくれたんだ……。


*-*-*-*-*-*


「マーカー!」

建物の外に出ると、ロッドが寄って来て眉をしかめた。

は眠らせた。近くで倒れていた男のコートを剥ぎ取ったが、やはり痛々しい姿には変わり無い。頬と尻には痣が残り、手首と足首には濃い縛り後がついている。

「……生きている。を捕まえていた奴ら以外は、これから追って来るだろう」

隊長の前に行く。隊長は、眼光が依然するどいままだ。

「…後は、お気に召すままに…」


後ろから迫り来る気配があったが、隊長とロッドで十二分に事足りる。
とりあえず、に服を着せて、手当てをしなくては。


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2007年2月23日