**そして、今、現実**
「で、寝ぼけてここから出ない様に手錠をしたってワケ。ほら、空から落ちても大変じゃん?」
「…それは、分かりました。でも、試験って…隊長さんが社長さんなのでは?」
話を聞く限り隊長さんが“いい”と言えば就職も決まりそうなものだけど…。
「俺らの隊は一応ガンマ団の一部だしね。事務職となるとスカウトって訳にいかないんじゃないの?」
ガンマ団…!世界的に有名な元・暗殺集団。今は、悪者限定にお灸を据えるだけになったらしいけど…。そんな武闘派な組織の面接なんて…。
受かるかどうかじゃなく、無事に終えて帰る事が出来るかどうかの方が心配だ…。
「あの…試験ってどんな事を…?」
「んー、どうなんだろ。戦闘要員とは違うだろうしね。」
“戦闘要員”という言葉に、私が通り過ぎて来た日常との違いを認識した。私の国って、平和だった。昔、先行きの見えない…どちらかというと敗北が見えてくる様な戦争をして、国の資源から国民の財産まで使いきって大敗してから、戦争をしない国へとシフトした国。
果たしてそんな日常に慣れた私に、ガンマ団の事務員なんて出来るのだろうか?
「何とかなるなる!」
ロッドさんは私の心配を余所に、ものすごーく楽観的な一言を吐き出した。
…たしかに、人生は成るようにしか成らないのかもしれない。どの道今の会社は辞めなければならなかったし、とにかく食い扶持を稼がない事には生きて行けない。
気合の拳に力を入れる。
「あっ、またそんな顔して。昨日みたいに笑ってぇ?」
笑ってといわれて、自然に笑える人が羨ましい。私はそういう部類の人間だ。
顔が引きつっているのが分かる。
「しかめっ面より、そっちの方が断然いいよ」
ロッドさんは褒め上手だろうか?いつも友達にはこういう時は“キモっ!”と言われていた私なのに。
そういえば、お金…きちんとお店の人には払ってくれたのだろうか。
「お店へお金は、払って頂けたのでしょうか?」
「大丈夫。ちゃぁんと払って来たよん」
…じゃあ、またあの店に行ける。昨日は呑みすぎてしまったようだけど、次はもっと控えめに飲もう。
さて…。また美味しいお酒が飲める様に、職務経歴書と履歴書を作って…シャワー借りて、ばっちりナチュラルメイクしなきゃ!
2007年2月16日
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