今日の夕飯は、作らなくて良くなった。ガンマ団の本部に、停泊して食堂で各々自由に食事を済ます事になった。

私はと言うと、1人で飛行船の外に出て星見自棄酒。声も出せず、涙腺が壊れた様にただただ涙が止まらない。

私の未熟さで隊長さんに怒られて…お酒に逃げるなんて、本当に負け犬度に拍車がかかる。
惨めだ…私って、本当にチッポケで惨めだ…。一生小さい器のままなんだ…。

「あれ…どないしました?」

声が聞こえて見上げたら、昼間のぶつかっちゃったオニーサンが居た。

「あ…今日ははすみませんでした」

「いや、べ、別に…。そないな所で飲んで…。風邪ひく前に船に戻りなはれ」

なんだか、オニーサンの顔が赤い。
私は、入れない…怖くて。

「…いやですっ!だって、隊長さんに嫌われちゃったもん…。」

「隊長?あぁ…ハーレム様の事どすか。何やらかしましたの?」

オニーサンが私の腕を掴んで立たせようとした。もちろん断固拒否だ。

「ヤだぁ!」

お酒も手伝ってか、言葉の強弱に歯止めが利かない。

「そないに酔って…風邪ひきますえ」

「いいもん!私の体を、頑張って使って仕事して、だけど怒られるんだもん!どうにだってなっちゃえばいいんですよ!」

オニーサンは、私をジっと見ていて、呼吸さえ感じられない位、動かない。
コワイ…よく考えたら、ガンマ団のオニーサンたちはものスゴイ訓練を受けてるだろうから…本当に怖い人たちなんだ…よ、ね…。

「怒るのは、な、な…仲間や…思うとるからと違いますか…?」

オニーサンは、もじもじしながら隣に座って来た。

「…だって、まだGさんやマーカーさんや隊長さん怖いし…ロッドさんは、ナメてるし…こんな風に思ってるヤツがあの人達にとって仲間な訳ないんです…」

余計に言葉が変になった…こんな事は思ってないのに、何だか悪口を言いたくなってしまったのだ。

「そう思うんは勝手やけど…何かして貰って、アンタが何か犠牲にした結果やったら…後味も悪うなりますわ」

なんだろう?オニーサンの、その言葉だけは、優しく胸に沁みてきて…響いて、私は、声を上げて泣いてしまった。

「わあぁあああぁぁん!!!」

「わっ!なんですの?いきなり大声出してからに」

「だって!北若さんの熱愛あったし、隊長さんは私が倒れた事に怒るし!でも、オニーサンの話が…!!」

言葉に出来ない何かが分かって、溢れ出してしまったのだ。

「…訳分かりまへん…」

オニーサンは呆れたように言って、それでも、ここを動かないで居てくれた。

「やっぱ、わて変わりましたわ…あの島で」

その言葉の意味は分からないけど…優しい人なんだなと思って、余計に安心した。


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「お晩どす…」

「只今でぇーっす!」

オニーサンに抱っこされて、私は船内に帰って来た。

「お、京美人もナンパすんのかぁ?」

「わてはそないに軟派やありまへん」

そういいながら、私をロッドさんへ引き渡した。

「オニーサン」

「…何どすか?」

「ありがと!」

私は、引っかかりなしに笑う事が出来て、ここ最近で一番の笑顔をした自信がある。

次の瞬間、オニーサンは目の前から“ガラガラン”という音と共に居なくなって、今日の記憶もここまでしか無いのだった。
ロッドさんに聞いた話だと、オニーサンはアラシヤマさんといって、その時階段から落ちたのだそうだ。しかも、マーカーさんと師弟関係にあるなんて!世間って狭いんだと、改めて思った。


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昨日、反省してから、からもらった千○鶴を持って、隊長の部屋に来た。

「あの…隊長さん…」

「なんだ?」

「これからは、体調崩さない様に気をつけます…少なくとも、無理は続けないので…ここに置いて下さい」

隊長さんは、椅子から立ち上がって私の前に来た。隊長さんは威圧感がある。怖いなぁ…と思ってると、隊長さんは、また片方の眉をしかめた。
だけど、今度は笑ってる。
その笑顔は“無茶すんなよ”と言ってくれているのだと取る事にした。

「これ、隊長さんが前に呑み足りないって言ってたお酒です。」



「はい」

「天下の特戦部隊の隊長の呼び方が“隊長さん”だと締まらねぇからよ…“隊長”と呼べ」

「わかりました。隊長…!」

「グラス持って来い。も呑もうぜ」

「はい!」

キッチンへと向かって、あのお酒はコップで一気に呑むものじゃないんだけど…と笑顔で考えていた。


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2007年2月17日