my monkey is blue.

今日はやっと風邪が治って、学校に行った。
そして、友達の恋愛相談を聞いてて、考えるところがあった。


やっぱり、学校が違うっていうのは、恋する乙女にとっては結構な障害だと思う。

だって、いつライバルが出るか分からない状態で…もしもライバルが長太郎と同じ学校だったら…フェアじゃない気がする。
それに、今みたいに気まずい状態だと、尚更会わない時間が焦りに変わる。

だから、思い切って、お母さんに一年近く我慢してきた事を言ってみた。

「お母さん。私、来年からでいいから、氷帝に行きたい」

「馬鹿な事言ってないで、空いた皿片付けなさい」

即座に、却下された。
だけど、私はめげずに抵抗してみる。

「いいじゃん!勉強頑張ってるし、兄弟居る訳じゃないし」

「いくらあんたが勉強頑張っても一人っ子でも、氷帝は無理。一番金のかかる私立校じゃないの」

「でも…長太郎やお姉ちゃんの話聞いてると楽しそうなんだもん」

「…あんたね、鳳さんとこの仕事を言ってみなさいよ?」

「おじさんが弁護士で、おばさんはその事務所の事務員。おばあちゃんが、着付けの先生」

「ウチは?」

「お母さんが看護士で、お父さんが劇団の主宰」

そうだよね…私の他に、お父さんも養ってるようなもんだよね…。
そりゃあ、氷帝なんて行けないよ。

「…あからさまに落ち込まないでよ。親不孝者なんだから」

お母さんは呆れたように呟いて、空いた食器を流しの洗い桶に入れて、また私に話し掛ける。

「でも…氷帝に負けない教育はしてるつもりよ?だって、は家事が殆ど出来るじゃないの。シミ抜きは出来なかったけど」

「そりゃ…感謝するべきだけど…本当は、皆みたいに毎日放課後延々と話したいよ」

小学校に上がってから、お父さん、お母さん、私で家事を当番制にされたから、嫌でも身にはつくと思う。
でも、回りの子は…家事は全部お母さんがしてた。羨ましいな。
長太郎のとこは、お姉ちゃんと、お婆ちゃんと、おばさんて分担してるけど。

「ウチは、ウチ。他所は、他所。」

そう。確かにその通り。
別に、お父さんとお母さんを困らせたい訳じゃないから、これ以上ワガママを言うのは気が引けた。

「…えー…。じゃあ、氷帝はもういいから、携帯買ってよ」

「何が“じゃあ”よ。氷帝と、携帯って話が繋がらないよね?」

お母さんは、余計に呆れたような顔をしている。
でも、携帯と氷帝とじゃ…絶対に携帯の方が安いもん。
これで、お母さんに揺さぶりかけられるかな?

「…じゃ、中間テストで全教科九十点以上とれたら、買ってあげる」

「やった!」

嬉しさの余り、ガッツポーズをしていたら、玄関のチャイムが鳴った。

、お願い」

「はぁい」

私は椅子から降りて玄関へと向かう。
足取りも、軽い。

ドアの覗き穴を見たら…制服姿の長太郎が見えた。

最後に怒られて気まずかった筈なのに、やっぱり姿を確認すると嬉しくてにやけてしまう。

…でも、反省してる様子が見えないと、また、怒られるんじゃないかな…。
でも、分からないんだよ。長太郎が何に怒ったのかが。

考えてると、また、チャイムが鳴った。

開けなきゃ。開けなきゃ。開けなきゃ。
でも、どうしよう。
どんな顔しよう。

一人で、ただただ手に汗をかいていると、またチャイムが鳴った。

とにかく、出なきゃ!

扉を開けて、長太郎を見上げた。

どうしよう、声が出ない。
久々に会えて嬉しいのに、笑えない。顔が引き攣ってるのが自分でもわかる。



長太郎も、困った顔をしてる。

何か言わなきゃ…。
と、思っても中々言葉は、喉から先に出てくれない。

困ってしまい、長太郎を見つめると、長太郎が頭を下げた。

「この前は、ごめん!があんな格好して来ると思わなかったから…びっくりして」

え…謝ってくれてる。
じゃあ、もう、この前の事は怒ってないの?

「俺、すごく酷い事言ったと思う。本当にごめん!」

長太郎が顔を上げて、私を見た。
本当に、困ってどうしようもないって顔をしてる。

昔、喧嘩して、私がまだ少しだけ背が高かった頃に“ちび!”と言ってしまった時の顔だ。泣く直前みたいな。そのあと、長太郎に“たんそく!”と言われて、泣きながら叩き合いの喧嘩になって、やっぱり二人してお姉ちゃんのげんこつを喰らったんだった。

あ…私は、同じ学校じゃないけど、こういう思い出を共有してるんだ。
…なら、同じ学校のライバルが、特別いい条件ってこともないんだ。

氷帝にこだわる意味が、私の中で薄れて行く。
この先も思わないって保証はないけど。

「私も、長太郎に怒られるような事をしてたかも知れないから…ごめんね」

長太郎の顔が和らいだ。

良かった。
長太郎と仲直りできて。
優しい表情が見られて。

この表情を、困らせないためにも、原因は聞いておかなくちゃ。

「ねえ、私のどの辺が、良くなかったの?」

途端に長太郎の顔が赤くなった。

は、悪くないよ!?本当に!」

その反応の意味が分からなくて、一瞬置いてきぼりを喰らった気になったけど、長太郎が“悪くない”って言うなら、悪くないんだろう。
…ひとまず、そういう事にしておこう。

「わかったよ。ありがとう、長太郎」

「ううん、も、ありがとう」

長太郎が笑ったから、私もつられて笑顔になった。
また、長太郎の前で笑えたことが、こんなに嬉しい。

「…俺の事忘れんといてー…」

長太郎の後から、いきなり声がしたので、一瞬嫌な汗をかいた気がする。
よく見たら…この前の眼鏡の人が居た。

「あ!すみません、忍足先輩っ!」

長太郎は慌てて、眼鏡の人…忍足先輩に謝った。

私は、そんな慌て顔で困った様子の長太郎すら好ましく思えるほど、長太郎中毒だ。



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2007/08/07