my monkey is blue.

今、私は、忍足先輩と言う人と、稽古場兼お客さん用の部屋に居る。
長太郎は、ご飯を食べたらまたウチに来ると言ってた。

…でも…何で氷帝のテニス部の先輩が私の家に?
何の用なのだろう?

この前、おんぶしてもらったけど、お礼の言い方が悪かったのかな?

「この前は、ありがとうございました。お礼は、後日しますね」

「ん?ええよ。ええもん見せてもろたし。礼はもう貰うとるしな」

「…どういう事ですか?」

「ミニ履いとったやろ?俺、女の子が足出しとるとこ見んの、好きやねん」

「は…はぁ」

会話続かない!
そもそも、自分のミニスカート姿については、どうやって返せばいいの?
早く来て!長太郎!

「ま、それだけやないけど…今日は、渡すもんがあんねん」

忍足先輩は、ポケットから絆創膏を取り出して、私の目の前に置いた。

絆創膏を渡すために、私の家に?

全く分からない。

「分けたる言うたけど、ちゃん帰ってもうたから」

「え…そんな、わざわざいいのに…」

間に合ってるしなぁ…。
救急箱なら、我が家はかなりの充実っぷりを誇る。

「ほんまは今日、ちゃんを紹介せえて鳳に言うたんやけど、拒否られてなあ。“抜けとる”とか“口うるさい”とか理由つけられたわ」

「…そうですか…!」

長太郎ってば、人にそんな事言うなんて。
今年のバレンタインは、ししゃもをチョコレートでコーティングしたものを贈ってやろうかな。

ちゃんは、鳳に大事にされとんねんな。微笑ましいわ」

忍足先輩は訳の分からない事を言う。
何で“抜けてる”とか“口うるさい”とか言われてるのに、大事にされてるのだろう?

「まあ…それは置いといて…今日は“ちゃんにどうしても渡さなあかんもんがある”言うて、連れてきて貰うたんや」

「絆創膏ですか?」

「それがメインやないよ?メインは、こっちや」

今度は、忍足先輩が二つ折りの紙を私に差し出した。

紙を開いてみたら“忍足侑士”の文字と、携帯電話の番号とアドレスがあった。

ちゃんのも教えてや」

忍足先輩は、携帯を取り出して笑いかけてきた。
それは…たしかハイスペックな機種だった気がする。
やっぱり、氷帝生の家庭はお金持ちなんだ。

「…ごめんなさい。携帯持ってないです」

ちゃん、嘘はあかんよ?」

忍足先輩は眉尻を少し下げて言って来た。
氷帝は携帯を持つ事は当たり前なのかな?
同い年の長太郎も持ってるし。

「いえ…本当です。」

「さよか…じゃあパソコンは?ちゃんのアドレスはあんの?」

「ありますけど、滅多にチェックしませんよ」

「あー…、じゃあ、これから毎日チェックしてな?鳳の学校の様子をメルったるわ」

なんだって?
学校での長太郎の様子を毎日報告してくれる?

忍足先輩の真意が分からなくて、対応に困っていたのだけど…長太郎の事を教えてくれるなんて、なんていい人なんだろう。

だけど…。

「赤の他人に、なんでそんな事をしてくれるんですか?」

忍足先輩は、驚いた顔をする。
でも、私の思う事は至極普通な感想だと思うんだけど。

ちゃん、水臭いで?袖摺り合うも他生の縁て言うやろ?」

忍足先輩は、不敵に笑った。
やっぱり、真意が分からない。

「だから、俺とちゃんは、縁者やねん」

なんなんだろう?その理屈。
よく分からない理屈を言われて、よく分からなくてなって、はっきり混乱した。

「疑うとるの?」

忍足先輩は、笑顔を崩さない。長太郎の情報は、欲しい。
でも、忍足先輩は何を考えてるのかな…それともただの、お人好しなのかな?

「ま、深く考えんと…使えるもんは使うとき」

“使えるものは使っておけ”…なんだろう、この言葉が綺麗に頭に響いた。

忍足先輩が考えてる事なんて、この際問題じゃない気がする。

私は、長太郎の好きなテニスをしてる時は見られない。
物凄く、好奇心を刺激される提案だった。

「…宜しくお願いします。後で、メール送りますね」

「宜しくな。ちゃん」

忍足先輩は、相変わらず笑っている。その笑顔はどことなくのっぺらぼうの様だった。
どうして、こんな印象を受けるんだろう?何を考えてるのか、分からないからかな。



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2007/08/07