「守、一緒帰ろ!」

「今日は無理だ」

守は学校でも帽子を手放さない。頭が蒸れて抜け毛の恐れとかないのかな?と偶に心配になる。本人は、そんな事気にしていない様子だけど。

「今日も、無理。の間違いでしょ。日本語は正しく使いましょー」

あぁ、私って、何でこう可愛くないんだろう…。

「さすがに頭いいな、。」

そう言い残して、守は駅に続く道を走っていった。

中学最後の大会が終わったのに、守は自主トレやら、気になる人(山田さんていうらしい)の所へ通い詰めやらで、全く一緒に居る時間が増えない。むしろ部活があった時の方が、一緒に帰れた。

しっかし…おじさんは偉いなぁ。“先物投資だ”とこの前も笑ってたっけ。結果を残してる守もすごい。

早く試験期間にならないかな。守は必ず私に勉強を教わりに来るから…守と2人きりになれる貴重な時間。私が守の役に立てる数少ない分野。
守が走っていった方向とは反対へ、帰る。



「んー…これは2…」

寝る前にいつもの復習。いつでも守に教えられる様に、準備は怠らない。

“トっ”……“トっ”……“トっ”……

変な音がする。しかも、音で判断すると、私の部屋の壁あたりからだ。
そうっと窓から外を見ると、守が壁でキャッチボールをしていた。

こんな寒い中、肩冷やしたらいけないじゃない!

慌てて鍵を開けて、守に声を掛ける。

「なにやってんの。寒いでしょ!?」

「やっと気付いたか。」

守は最後のボールを見ずに取ると、窓に手をついた。

「話そうぜ」

私の返事はお構いなしに、それでも靴は窓の下に置いて、部屋に乗り込んで来た。

窓を閉めて、カーテンを閉める。

「それで、何を話すの?」

守は座布団に座って、笑みを浮かべながら帽子をとった。なんとなく、嬉しい瞬間。
それが、私は、気を許されてる気がして、嬉しい。守はモテるから。

「俺、高校決めたぜ」

「えっ、やっぱり野球でだよね?どこ?どこ?」

共学がいいなぁ…最悪、男子校でも近くを狙って…どんな高校も受かるようにって勉強を頑張って来た。とりあえず、進学校でもなんとか狙える圏内だってキープしてる。

「白新高校だ」

守は、希望の入り混じった瞳で答えてくれた。

白新…そんな高校あったっけ?

「白新?…聞いたことないけど…」

「神奈川の高校だぜ。は知らねえだろ」

「神奈川!?」


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