日曜日、私は球場に行かずファーストフードの店に居る。
昨日、夕飯が終わった後にから電話が来たのだ。
「どうしても話したいんだ。もテンション上げずに聞いてくれないかな」
声の雰囲気には、以前のような考えのない雰囲気はなかったので、会ってみる事にした。
でも、会って考えナシだと判断したら、その時は問答無用で帰るつもりでいる。
との事がハッキリしていなかったので、決着を付けられるのならつけたかった。
階段を見ているとがMサイズの飲み物を持って上がって来た。
すぐに私に気付き真っ直ぐに向かって来る。
「早いな」
「早起きしたから」
「はは…相変わらず俺の為とか言ってくれないんだな」
苦笑いしながら正面に座る。
が右手で飲み物を持ちストローを咥えた。
「何飲んでるの」
「メロンソーダ」
昔はこんな些細な会話でもをカッコイイと思って、心の中では舞い上がっていた。
今日は落ち着いて、穏やかに切なく見ている。
が飲み物をゆっくりと置いた。
「…この前も言った事だけどさ」
真剣な面持ちで、見据えられた。
「どうしても、ヨリ戻せないかな」
私の答えは決まっている。と、もう前みたいに付き合う事は出来ない。
メロンソーダを飲んでるのを見た時の気持ちが証拠だ。もう取り返せない物に関して抱く感情…それに懐かしさ。
「と恋愛したいとは思わない。私にとっては、もう過去の事になってるんだよ」
「…そうか」
は下を向いて、膝に置いた手に力を入れた。
「すんなり言い切って貰って良かったかも」
心なしか、声に震えが聴き取れたけれど、気付かない振りをする。
「…私も、思ってる事言えて良かった」
との事が、無ければ良かったなんて今は思わない。“大切”な思い出になるには、まだ時間が掛かると思うけど。“ありがとう”とはまだ到底思えないけど。
「今日はずいぶん大人しいね」
この前家に来た時の様子からは考えられない位大人しい。
「…の顔つきのせいだ」
顔つき…整形してないから変わる訳ないじゃないか。
「それじゃわからない」
「興味ない顔してる。俺を好きじゃないって言われても…納得するしかない」
は相変わらず下を向いて喋り続ける。
「この前は怒ってたから、まだ俺の事気に掛けてくれてるのかと思った。でも今考えると、山田って奴をかばってたんだな。」
が顔を上げた。
「来てくれて、ありがとうな」
笑顔が明らかに無理をしてる。
「バイバイ」
泣きそうな顔に引きずられたくなくて、席を立つ。
「…山田って奴…」
がポツリと呟く。
「を幸せに出来そうだな」
私は、恥ずかしくなって早足で出口に向かった。
可も無く不可もない空。
今から行っても、試合の中盤までに球場に着けるかもしれない。
でも…今日は行かない。
不要な気持ちが多過ぎるから。
私は山田君を、男の子として「好き」と言い切るだけの自信がない。
山田君を好きでもいい資格があるのかと考えたら、まだ不安で進めなくなる。
のことにケジメをつけて、資格の一つはクリア出来たと思う。
だけど「好き」と自負するのは、まだ大袈裟な気がするのだ。
まっすぐ家迄のコースを思い描いて、店から一歩、ニ歩と離れた。スーパーでお使いを済ませて帰ろう。
次の試合があったら、観に行ける精神状態にしたい。
次は、山田君を困らせないから。
明訓が勝っていますように。
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2006/9/27